映画「みんなのアムステルダム国立美術館へ」に登場する仁王像のふるさと

2月20日から渋谷で上映される「みんなのアムステルダム国立美術館へ」
同美術館の改築工事からリニューアルオープンに辿り着くまでの波乱の10年を描いた、涙と笑い溢れるドキュメンタリー映画である。怒り、失望し、妥協を重ねながらも、再び美術館の扉を開けるために猛進する全関係者たちの熱い思いが浮き彫りになった傑作。こんなにも赤裸々に舞台裏を見せた美術館はない(たぶん)。泥沼の裏話すら、今では同館の貴重な伝説だ。これが作り話でないことに驚いてしまうほどドラマティックなドキュメンタリー。お時間があったら是非!

今回の話は、その映画にも頻繁に登場する仁王像のふるさと、島根県の岩屋寺について。

この仁王像、すなわち金剛力士像は、国立美術館に新設されたアジア館の目玉だ。
昨年の秋、担当学芸委員の念願で、盛大な開眼式が行われた。

京都から招かれた大勢の僧侶が執り行った、荘厳なお式。私は、そこに運良く立ち会うことができたのである。
学芸員のメノーさん(映画にもよく出てくる)が式後の講演で、この2体の像のふるさと岩屋寺の写真を見せながら「芸術作品は、自分の身を守る術を持ち合わせていない。廃寺となった岩屋寺を訪れてみて、それを強く感じた」と語っていた。
その言葉がなぜかとても印象に残り、この秋、私もその岩屋寺を訪れてみたのである。

この旅の始点となった名古屋近郊から、鉄道で約10時間。1日に数本しか走らない単線路線を乗り継ぎやって来たのは、出雲の山の中の駅。降り立った「よそもの」は私だけだった。
駅に待機していたボランティアのガイドさんに「どちらへ?」と聞かれ「岩屋寺を見に来ました」と答えると、彼の表情がにわかに変わる。驚いてらっしゃる様子だった。
「あそこへは行かれないですよ」とおっしゃる。
道も整備されていないし、何しろスズメバチやまむしがうようよしていて危険だとのこと。それでも何とか行ってみたいのだと伝えると、どなたかに電話をかけはじめた。数分後町役場の方々が数人集まり、「ついこの前もスズメバチがたくさんいた。全身白っぽい服装で帽子を被り、まむし対策には長靴、登山用のスパッツなどをはいて、長い棒を持って行った方がいい。とにかく重装備で行き、スズメバチに出くわしてしまったら諦めて静かに退散するように」との忠告を受ける。そして、「岩屋寺周辺に詳しい女性のタクシーの運転手さんがいるから、その方にアテンドしてもらうとよい」と連絡を入れてくださり、翌朝宿で落ち合う約束をした。

宿に到着してからすぐにググってみると、「スズメバチは黒いものに寄ってくる。遭遇して手を振りまわしたりすると襲ってきて、一度さされると多くのハチが寄ってきて攻撃をしかけてくる」などなど、都会っ子の私は知らないことばかり。急いで近くのガーデンセンターに行って、使い捨ての白い紙の作業着を運転手さんの分と2枚、膝までの長靴、そして安全ゴーグルを購入。翌日にそなえた。

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