ヘルト・ウィルダース論争 3

_DSC4853

あるニュース番組に、ウィルダースの個人史や政治観に関する本を書いた歴史家クン・フォッセン氏が出演していた。


氏によると、自由党にはキャンペーンを展開する資金がない。
そのため、定期的に今回のような一線を越える発言を繰り返して世論の注目を引き、存在を主張する。つまりあの過激な発言は、決して失言ではなく戦略で、全てウィルダースの狙い通りに機能していると説明した。


「今回のウィルダースの発言は、明らかに一線を越える差別的なものと皆は言うが、これまでの発言も毎回一線を越え続けてきた。こうして毎回新たな提言で新たな一線を引く。その結果、オランダ政治全体を巻き込んで大論争を起こすが、しばらくすれば必ず静まる。そんな火事が鎮火した後に人々の脳裏に残るのは、“ウィルダースの言い分には一理あった”という印象だけ」。だから、他の政治家がウィルダースの挑発に乗って反論するほどに、それは彼の思うつぼでもある。
多くのオランダの政治家は、そんな手には乗るまいと常々心がけてはいるものの、今回の「モロッコ人移民の数を減らそう」という意味あいの発言は、特定のグループを排除しようという差別、決して見逃せないとする。(ウィルダース自身は、「そんなことは言っていない。What do you want? More? or Less Moroccans?と問いかけたら、人々がLess!と応えたのだ」と弁明)

モロッコ系移民をターゲットに

オランダには多くの移民がおり、そのほとんどが祖国とオランダの両国籍を所有している。
イスラム圏の移民はトルコとモロッコからが大半で、特にモロッコ系とその二世、三世の犯罪率は高いとウィルダースはこれまでに繰り返し主張してきた。
思い返してみると、かつてウィルダースが「犯罪を犯すモロッコ人は国外追放にするべき」と声高に訴えていた時、「犯罪の撲滅を目指すのは当然。しかし、移民は同時にオランダ人でもあり、特定のグループを特別視するのは差別だ」と多くの政治家や世論が反論していた。
今回、ウィルダースは更にコマを進めて「モロッコ人を追い出そう」とも取れる発言をした。すると「犯罪を犯すモロッコ系は出て行けというならまだしも、ウィルダースは今、モロッコ人全般を攻撃している」と反論する人が大勢出てきた。
けれども、その「・・・まだしも」の発言は、今までは「一線を越えたもの」とされてきたはず。まるで、より過激な新提言との比較の中で、いつの間にか「許容範囲」に格上げされてしまったかのようだ。これを繰り返すことで、過激なテーゼに対する世論の耐性が強まり、ウィルダースの画策は少なからずも進展してはいないだろうか。

フォッセン氏の話が本当ならば、ウィルダースは今、欧州議会選を目前に、低予算で効果抜群のキャンペーンを展開していることになる。


(終わり)

ウィルダース論争2へ

ウィルダース論争1へ