アムステルダムで執り行われた、仁王像の開眼供養

_DSC3771k

10月13日。
アムステルダム国立美術館のアジア館に展示されている2体の仁王像に、魂が吹き込まれた。
仏様を象った木像に「魂」を込めるための、「開眼供養」が執り行われたのである。

国立美術館に招かれた京都・大覚寺の僧侶たちが、ま新しい近代的な美術館展示室で厳かに供養を執り行った。その後、館内アトリウムで大勢の来観客に見守れる中、ご祈祷も行われた。当初は中庭での護摩祈祷が予定されていたが、あいにくの雨のため館内でも行える火を焚かないご祈祷に急遽変更。
神聖な火にかわって花びらを象った色鮮やかな色紙が宙を舞う、美しい式となった。

学芸員メノー・フィツキさん

この仁王像と開眼式について、学芸員のメノー・フィツキさんによるレクチャーも行われた。

「この美術館で展示している仁王像は14世紀に作られたもので、かつては島根県の岩屋寺を守っていました。寺はすでに廃寺になっており、像はアートディラーより購入しました。この像が置かれてた場所を見るために私は岩屋寺を訪れましたが、そこで目にしたのは、”門番”のいない朽ちた寺門でした。仁王像の小屋の側壁には、像を取り出すために開けられた大きな穴がそのまま口を広げていました。この光景を見たとき、私は何とも言えないメランコリーを感じました。悲しくもありました。我が美術館にある仁王像は、かつてはここが住処だったのだ。そして芸術品とはなんとも儚く、どんなに素晴らしい作品でも自らを守る術は持ってはいないのだと改めて認識しました」。
そんな彼の言葉は、芸術への愛情と、宗教に対する敬意に満ちていた。そして、この美術館が2体の像の新たな住処となるようにという願いを込めて、この開眼式を行ったのだと説明した。

ところで、非常に難航した同美術館の改築工事から再開までを追った「新しい国立美術館」という長編ドキュメンタリーは、とても話題を集めた。
リニューアルオープニングの頃にテレビでも放映され、大勢のオランダ人がこの番組を通して新装の美術館の背景を知った。その中には、再オープンのメドも立たなくなるほど工事が行き詰まった頃に撮影された、メノーさんのインタビューもあった。
とても申し訳なさそうな面持ちで、倉庫に置かれた仁王像の胸に手をあててこう語る。
「仁王像にはリスペクトが必要だ。真っ暗で、訪れる人もいないこんな場所に置いておくなんて、彼らの本来のあり方じゃない。わざわざ日本から来たのにこんなことになってしまうなんて、僕も少なからず責任を感じている。いつか必ず、どんなことをしてでも、最善を尽くしてこの像を美しく展示する・・・そんな思いから、夜中に目が覚めてしまうこともある・・

この印象的なシーンを思い返しながら開眼供養やご祈祷を見ていたのは、私だけではなかったはずだ。

(1枚目の写真の一番左、2枚目の写真最前列左に座っているのがメノー・フィツキさん)


(写真をクリックすると拡大します)

(c)studio frog